CITESについて考える


  • CITESって何?

     皆さんはCITESと言う言葉を知っているだろうか?
    一応之で『サイテス』と読む。 メディアでは『ワシントン条約』とも呼んでいるので、其の方が判りやすいかも知れない。 日本での正式名称は、
    絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約
    となり、英語表記では、
    the Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora
    となる。 この赤字で示した部分を並べて『CITES』となり、その第一回会議がアメリカのワシントンで開かれたため『ワシントン条約』と呼ばれている理由である。  まぁ、正式名称は知らなくても何も問題は無いとは思うが、その基本趣旨だけは理解していただきたいと思う。
  • CITES発足の経緯

     1972年、国連の『人間環境会議』に於いて、『特定野生動植物の輸出入に関する条約を作成し、野生動植物を保護する』と言う決議案が採択され、この決議案の基で米国政府及び国際自然保護連合(IUCN)が中心となって、野生動植物の国際取引の規制のための条約作成の為の準備をし、翌年1973年3月3日アメリカワシントンで採択された国際条約。  日本は1980年11月4日にこの条約を批准した。
  • CITESの基本精神

     これは一言で言うならば『野生動植物の絶滅を防ぎ保護する事』である。
    そのためにはどうしたらよいか、何が生物にとって幸福なのか、である。 ただし、条約は国際間の取り決めであり、CITESに於てはこの国際間における『商取引』に対し、規制をかける事が主たる目的である。 と言うことは、一度日本国内に入ってしまった動植物は、国際間の取引では無く、国内での商取引となるためCITESでは規制の対象にはならないのでる。 それを怪傑するためには国内法を整備しないといけない。 日本に於ては様々な法で取り締まる事になっている。 基本となる国内法は
    1. 動物の愛護及び管理に関する法律
    2. 動物の保護及び管理に関する法律
    3. 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律
    になるだろうか。 これらの法律によって、国内での取引を規制し、監視しているのである。  CITESでは、その危急性に応じて『付属書』と言うもので、三段階に分かれている。 付属書は1・2・3と在り数字が若いほど危急性が高いと言うことになる。
    1. 『付属書1』は最も絶滅に瀕している動植物で、一切の商取引を禁止する種
    2. 『付属書2』は現段階では絶滅に瀕してはいないが、このままではその恐れのある種
    3. 『付属書3』は締結国が他国の力を借りて保護すべきだと判断した種
  • CITESの問題点

    ここまで書き進んでくると、何も問題は無いように思える。 が、この条約は問題だらけなのである。 何が問題なのか箇条書きしてみる事にする。
    1. 国内法が整備されない限りある意味では密輸し放題
      (国内での罰則がなければ、CITESにより密輸個体は没収されるが其れだけである)

    2. 密輸された生物はその生物が輸出された国へ返還するのだが、その費用は輸出国
      (絶滅に瀕している生物が生息している地域は発展途上国が多く、返還費用が自国持ちではなかなか捻出できない)

    3. この条約自体が国際間の政治に利用される
      (鯨や黒マグロが話題に上がるが、これらを規制して欲しくないならば、、、と言う取引があるとされる。)
    皆さんはどのように思うだろうか? 私は、国内法に頼るのは条約と言う性質上仕方ないと思うが、政治手腕として利用されるのは真っ平である。 また、日本の現状では没収個体の管理は動物園等に委託するケースが殆どだ。 確かに動物園は飼育のプロなので問題なさそうだが、動物園で飼育できる数には限度がある。 さらに、委託された生物に対する補助金も年間20.000円弱(2003年10月現在)でしかなく、管理費のホンの一部でしかない。 最近の法改正で、密輸した本人に返還代金を支払わせるように改正はされたようだが、本人の特定が出来なかったり、財産そのものがない場合等、なかなか実施できていないのが現状である。